研究内容


「社会における技術とイノベーションのマネジメント」(Technology & Innovation Management in Society)

 

  Key words: イノベーション・マネジメント&政策、標準化戦略、ビジネスエコシステム論、知財戦略、自動車産業論、中小企業論

 

 

  1. 標準とイノベーション
    • 製品システムの複雑化に伴い、協調と競争をベースにしたエコシステム型の産業構造が台頭しつつあります。従来はICT産業中心でしたが、IoT(Internet of Things)というコンセプトのもと、あらゆるデバイスがつながる世界になるためには、つながるためのルールとしての標準(Standard)が重要となります。従来の標準化に関する研究は、Winner-Take-All(勝者総取り)の囲い込みを中心としたデファクト標準に関するものが大半でした。しかし、近年、実務的には、コンセンサス・ベースの標準の多く見られるようになっています。例えば、Industrie 4.0やAUTOSARなどは典型的な事例です。こうした標準は、エコシステム型産業構造で生み出される新しい価値、すなわちイノベーションの土台となります。しかし、コンセンサス・ベースの標準は、デファクト標準のように、一企業(あるいはグループ)が排他的に使用することは難しく、標準にかかわるすべてのステークホルダーに広くその便益が享受される必要があります。その結果、コンセンサスベースの標準をめぐっては、フリーライダーの問題が生じてしまうのです。以上の認識をもとに、標準とイノベーションに関するテーマでは、以下の研究を行っています。
      • 標準の本質的意義
      • 各ステークホルダー利害関係に着目した標準の形成プロセス
      • 標準とビジネスエコシステムの関係
      • 標準からの経済的価値獲得

  2. 中小企業の知財戦略
    • 企業にとって、知的財産は競争優位の源泉のひとつです。しかし、そうした知的財産(技術)は、市場に広く普及してはじめて、利益を稼得することができます。換言すれば、市場に普及しない知的財産は、いくら高いレベルのモノであっても競争優位には貢献しません。大企業であれば、広告宣伝、信用力、マーケティング能力を活かして、自社の知財を普及させることが可能です。しかし、中小企業の場合、そうした「力技」をとることは難しいです。限られた資源の中で、自社の知財を活かして、技術の普及(オープン戦略)と利益の獲得(クローズ戦略)をどうバランスさせるのか。中小企業を対象に、オープン&クローズ戦略を研究しています。

  3. 地政学を考慮したものづくり戦略
    • 工場の労働生産性は、賃金と生産性によって決まります。賃金の世界的な上昇が続く中、グローバル競争で勝ち続けるためには、持続的な生産性のカイゼンが重要となります。そうしたものづくりのデファクトスタンダードはトヨタ生産方式(リーン生産方式)です。しかし、ものづくりのベースには、各国独自の文化・風習、あるいは労働環境などがあり、そうした地政学的要素を考慮した適応が求められます。自動車産業を中心に、世界各国のものづくり戦略を研究しています。また、最近では特に下記の地域に力を入れています
      • アフリカ地域
      • 東欧地域

  4. モビリティ社会を中心とした最先端技術動向
    • 市場の満たすべき技術要件が明確な「インクリメンタル・イノベーション」の時代には、例えば燃費の向上や液晶解析度の向上など、インクリメンタルイノベーションの競争が主となります。しかし、IoT(Internet of Things)、AI(人工知能)、ロボット、VR(バーチャル・リアリティ)など、尖った技術を応用する「ラディカル・イノベーション」の時代には、そうした新しい技術を活用して、いかに顧客に潜在的ニーズを満たすかが重要となります。自動車産業においても、「自動運転」、「Connected(スマホとクルマの連携)」、「Industrie4.0」のキーワードに代表されるように、業界構造を一新するようなラディカル・イノベーションの時代が訪れようとしています。そこで、そうした大きな革新をもたらす技術に着目し、その技術動向やモビリティ社会に与えるインパクトについて研究しています。